おぼろげな記憶の中の牛時計

 幼い頃、実家には牛の目覚まし時計がありました。
 私個人は特に思い入れもなく、誰かに「牛の時計あったよね?」と言われれば「あったと思う」とやや自信なく答えるくらいのおぼろげな記憶です。

 先日妹にその牛の時計の話を振られました。彼女は幼い時分その時計が相当怖かったようで、繰り返し悪夢を見るほどだったそうです。
 曰く「アラームで『エリーゼのために』が流れる黒い時計だった」とのことですが、私のうすぼんやりとした記憶ではアラームのメロディなど欠片も憶えていませんし、黒かった印象もありません。むしろ大部分が白かったような気がします。
 牛の時計が存在した、という大筋に齟齬はなかったのですが、話せば話すほど時計の外観が噛み合いません。
 口で説明するのも限界があるので、お互いの記憶にある時計を絵で描いて説明しようという話になりました。

 余計な影響が出ないよう、お互いの途中経過は一切見ないで描いた絵がこちらです。

左:妹作 / 右:私作

 相手の絵を見た瞬間「絶対こんなのじゃなかったでしょ」とお互いに思いましたし言いました。
 こうして改めて並べてみても、とても同じ時計を描いているとは思えません。

 実家の現物はとうに処分されているでしょうから、文明の利器を使ってGoogle先生に正解を尋ねてみることに。
 とは言ってもネットがそこまで発達していない時代のものなので、検索したところで出てくるかどうか……と思ったらあろうことか画像検索の1番目に出てきました。これです。

実際の時計

 私はこの写真を見て「あー、これだ!」と思ったのですが、妹はいまいちピンとこなかったようでした。
 更にネットの海を漂い、この時計からエリーゼのためにが流れるという情報を入手したところでほぼ確定。実家にあった時計は間違いなくこれだろう、と結論づけました。

 面白かったのが、どちらの絵も正解とも不正解とも言いきれないところ。足して2で割って顔を右側にやったら、まあまあ似てるものになるんじゃないでしょうか。
 妹が描いた黒くて上が丸みを帯びた時計は牛の時計とは別に存在した記憶があるので、彼女はその別の時計と牛の時計を混在させているのかもしれません。私がまったく憶えていなかったアラームについて、彼女は曲名までしっかり憶えていたというのも面白いです。

 同じものを見ていても個々で見方が違うので、記憶の中で形が変わってしまうんだなあと実感した出来事でした。

投稿者プロフィール

戸代原 晃
ハリネズミとのんびり暮らしています。

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