「スパイダーバース」と「運び屋」

 今日は映画を2本、はしごして観てきました。
 4回目だか5回目だかの「スパイダーマン:スパイダーバース(原題:SPIDER-MAN INTO THE SPIDER-VERSE)」と、初見の「運び屋(原題:THE MULE)」です。

 スパイダーバースは公開初日に観て以来すっかりハマってしまって、誰かと一緒に行ったり一人で行ったり、ちょくちょく観に行っています。
 アニメは正直ちょっと苦手でディズニーだろうとジブリだろうとまったく観ないので、最初スパイダーマンがアニメ映画化と聞いた時は観に行くかどうか悩んでいました。まさかこんな足繁く通うことになるとは……。
 どこで一瞬を切り取っても絵になるので瞬きするのが惜しくて、何度観ても飽きません。キャラクターの掛け合いも好き。みんな覆面ヒーローなのに表情豊かなところも大好き。

 内容について語っていたらキリがないのでひとつだけ。
 その後激動するストーリーでうっかり忘れちゃってたんですけど、初見のキングピンは笑いました。アニメだからってデフォルメが過ぎるだろうと(笑)
 あのファニーなデザインで、自業自得としかいえない動機で、それでもヴィランとしての貫禄たっぷりなのはさすがピンちゃんでした。好きだなあ。
 デザイン面ではグリーンゴブリンもだいぶ思いきったなーって印象でしたね。

 入場者特典はポストカードだったみたいですね。
 何気なくもらってましたが、これでコンプリート出来たのかな?

 続けて運び屋。90歳のおじいちゃんが白い粉状のオクスリの運び屋をやる話です。
 ニューヨークタイムズ・マガジンに掲載された「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」という記事が原案で、パンフレットには記事が和訳で載っています。
 主人公である運び屋のおじいちゃんの家族関係などは映画関係者の創作だそうですが、原案記事を読むと運び屋としての手口や本人の(外向けの)性格などがかなり忠実に映画へ反映されている印象です。

 タイトルしか知らない状態で観た(90歳のおじいちゃんが主人公だということすら知らなかった。タイトルからドラッグ関係だろうとは思っていた)のですが、想像以上に面白かったです。

 運び屋だし犯罪だし暴力的で血なまぐさい世界が描かれるのかと思いきや、大半はおじいちゃん・アールがノリノリで歌いながらドライブを楽しんでいる場面です。
 他の登場人物も麻薬カルテルのメンバーだとかDEA(麻薬取締局)の捜査官だとか仰々しい面子が揃っていて実際暴力的なシーンもあるのに、随所で愛嬌を感じさせられるので一概に悪い奴だとか良い奴だとか思えない。人間の多面性をとてもわかりやすく表現していると思いました。

 テーマとして「家族愛」を強く感じる作品ですが、それとは別に「許し」……「許容」……しっくりくる表現が見つかりませんが、そういうものを感じさせるシーンが印象的でした。
 特に心に残った場面をひとつ。

 運び屋のお仕事の最中、アールは道端で立ち往生している黒人夫婦と小さな子供のファミリーを心配して車を停めます。
 運悪くタイヤがパンクしてしまったが修理方法がわからない、ネットで調べようにも場所が悪く繋がらないとのこと。
 なんでもかんでもインターネット頼りの若者に呆れながら、アールは彼らを手伝いタイヤの交換をすることにします。トランクにはイケナイオクスリがどっさり、背後にはハンドラー(監視者)の目が光る状況で超マイペースなおじいちゃん。その際アールは立ち往生した黒人夫婦を一度、「ニグロ」と呼んでしまいます。

 強張った表情で固まる黒人夫婦。そりゃそうです、ニューヨークでは口にするのも条例で禁止されている蔑称(の元になった言葉?)ですから。
 現実問題、黒人に対して「ニガー」と発言して暴動沙汰になった例は枚挙に暇がありません。映画の中のこの夫婦が激昂してもおかしくはないシーンです。
 ですが黒人女性は苦笑しながら、アールに言うのです。
「今はそういう言葉は使わないの。『黒人(ブラック)』って呼んで」と。

 物凄く印象に残ったシーンでした。
 アールは女性の言葉を受けて「ああ、わかった」と素直に返事をします。そしてみんなで協力して、パンク修理をはじめます。
 この黒人女性の……なんていったらいいのかな、器や心の広さじゃなくて、優しさってほど単純なものでもなくて……表現出来ないんですが、深い思いやりみたいなものが、本当に美しかった。

 アールは90歳。退役軍人の高齢者。白人。
 自分の言葉が蔑称という意識はきっとさほど強くなかったのではないかと思うのです。黒人にも白人にも属さない私から見ると、差別問題に敏感な現代という時代についていけていない老人の悲哀の方が強く感じるくらいです。
 なので想像することしか出来ないのですが、迫害の当事者だった彼女からしてみれば屈辱的な呼称でしょう。でも彼女は激昂することなくさりげなくアールを諭しました。アールは素直に頷きました。
 たった数分のシーンですが、私が思い描く「平和な世界」の理想がそこに詰まっているようでした。黒人女性のような大人でありたいし、アールのような老人になりたいと思いました。

 ここで1回泣いて、このあと別のシーンで2回くらい泣いて、実はまだ今も若干頭が痛いです。
 あんまり泣くことがないので慣れていなくて(笑)

 いろいろと考えさせられる反面、描かれる情景は小難しい理屈抜きに綺麗で、良い映画でした。
 ストリーミング配信がはじまったら、今度はテレビでも観たいですね。

 そうそう。アールの俳優さんが数年前に亡くなった私の祖父にそっくりで、不思議な気持ちで映画を観ていました。
 祖父はタクシードライバーだったので、ある意味「運び屋」ですし。パンフレットで改めて見ても似ています。若い頃すごくモテたらしいけど、晩年介護施設のお世話になっている時も同じ施設利用者のおばあさま方にモテモテでした。
 生真面目で堅物で硬派だったので、アールのようにふしだらな女性関係はなかったそうです。そこは似ていませんが、本当に顔はそっくりでびっくりしたなあ。

投稿者プロフィール

戸代原 晃
ハリネズミとのんびり暮らしています。

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