天国の祖母へ – 『このあとどうしちゃおう』

おじいちゃんが どう おもっていたのかは もう わからない。
おじいちゃんと そのことについて はなしてみたかったな と おもう。

――ヨシタケシンスケ・作『このあとどうしちゃおう』より

たまたま寄った他県の本屋の特設コーナーで見かけて、その場で購入を決めた絵本です。
発売記念の気合が入ったディスプレイで、この『このあとどうしちゃおう』の複製原画も展示されていました。

絵本は「ぼく」の「おじいちゃん」が死んでしまった場面からはじまります。
おじいちゃんの部屋をみんなで掃除していると、「このあとどうしちゃおう」と題されたノートが出てきました。
このノートにはおじいちゃんの絵と文字で、「自分が将来しんだらどうなりたいか、どうしたいか」がたくさん書いてありました。

ここから先はしばらくおじいちゃんの「このあとどうしちゃおうノート」の中身を覗きます。
字もしっかりとしたフォントではなく、手書きの文字になります。
「このあとのよてい」からはじまり、「てんごくにいくときのかっこう」「こんなおはかをつくってほしい」など、おじいちゃんの予定や願望がこれでもかと詰め込まれたノートの内容はユーモアに溢れていて、とても楽しそうです。

「死」という題材を子供向けの絵本に落とし込むのは想像だに難しいことだと思いますが、この絵本はその塩梅が絶妙です。
おもしろおかしく描きながら、決して「死」というものを茶化したり軽んじたりはしていません。
「ぼく」ではなくて「おじいちゃん」の目線でノートを見返してどんな気持ちでこれを書いたのかを想像すると、それがよくわかります。

たまたま立ち寄った本屋の、たまたま通り掛かった壁に飾られていた複製原画を一瞥するだけでも、心を打たれる絵本でした。
購入してからはいちばん身近な本棚に入れて、時々手に取ってはぺらぺらと眺めていました。

年末からずっと忙しない日々が続き本棚の手入れも疎かになっていたのですが、今日ようやく重い腰をあげて手入れをすることに。
本の傷みをチェックしながら、この絵本も久し振りに読み返しました。

このページを開いた瞬間、自分でもびっくりするくらい唐突に涙が出てきました。
本が濡れないように慌てて閉じて、声を上げて泣きました。

昨年の夏、祖母が他界しました。
認知症を患っていましたが、自分の子供や孫、親族みんなに看取られて自宅のベッドで逝きました。
いよいよ危ないというのは亡くなる二週間前に言われていたので、それを聞いてすぐに妹と一緒に顔を見に行きました。
その時にずっと介護をしてくれている叔母から「昨日は大好きなスイカを食べたんだよ、ほんのちょっとだけどね」と聞いて、祖母の好物がスイカだということを初めて知りました。

いわゆる外孫でしたが、私はずいぶんと祖母に可愛がられた記憶があります。
祖母の第一子は難病で二十歳を迎える前に亡くなってしまったのですが、私は幼い頃からその人に瓜二つだったそうです。
総勢8名の孫の中でいちばん可愛がられているのがあなただよ、と親族によく言われました。
「亡くなった姉さんにそっくりだからねえ」も、よく聞く言葉でした。
しかし祖母本人から「亡くなった娘に似ている」と言われたことは一度もありません。

祖母がどういう気持ちで私に接してくれていたのか、今となってはもうわかりません。
先だった娘の面影を見ていたのかもしれないし、そうじゃなかったかもしれません。
そんなことはどちらでもよくて、私にとってはいつだって「優しいおばあちゃん」だった祖母に対して、私は果たして「可愛い孫」でいられたのかなと、今さらそんなことが気になって仕方ないです。

祖母が喜んでくれるなら、正直細かいことはなんだってどうだっていいです。
なんだっていいのに、何ひとつできない。
だってもう、亡くなってるから。

私は祖母の葬式で泣きませんでした。
人前では泣けないからです。
既に他界した祖父の時もそうでした。

このページを見たとき、「おばあちゃんはおじいちゃんに会えたかな?」とふと考えました。
その瞬間、間欠泉が噴き出すみたいな勢いで涙が溢れて、止まらなくなりました。
今もボロボロ泣きながら、いつも以上に支離滅裂な文章を打っています。

私はおばあちゃんのお葬式で泣きたかった。
いっちゃ嫌だって、子供の時にすら言わなかった我儘だって言いたかった。
人前だから、みっともないから、いい大人なんだから。そんな理由で我慢なんてしたくなかった。

無意識に蓋をしていた本心に今さら気付いたところで遅いけれど、気付かないままでいるよりはずっとましのはず。
鼻をかみ過ぎて頭まで痛くなってきたけれど、今日この絵本を開いて良かったです。

いつか天国にいけたなら、おばあちゃんに「意地張って強がってごめんね」って言いたい。
「わかっとるよ」って、いつかみたいに笑ってくれるかなあ。

ああ、そうだ。
忘れないように、私の「このあとどうしちゃおう」ノートに書いておかないと。

投稿者プロフィール

戸代原 晃
ハリネズミとのんびり暮らしています。

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